|
スポーツ・ユーティリティ・ビークル()とは、自動車の形態の一つ。「スポーツ用多目的車」と訳すことができる。通常はSUVと略すことが多い。本稿においても、以下SUVと記す。 3ドアと5ドアがあり、5ドア車の一部の車種では3列目の座席をもつものもある。 == 歴史 == スポーツ・ユーティリティ・ビークルの「スポーツ」とは、スポーツアクティビティー、つまり人間の娯楽的な活動(サーフィン、スキー、キャンプなど)を指す。 アメリカでの自動車のジャンルの呼び方のひとつとして、政府各省や保険会社でも使われる一般的な用語である。ミニバンやRV(アメリカでの本来の意味はキャンピングトレーラーやモーターホームを指す)などと同様、あくまでも用途上での分類であるため、必ずしも「四輪駆動」である必要はなく、駆動方式など、クルマの構成、構造による定義は難しい。 あえて定義するならば、元来の、つまり狭義のSUVとは、 #アメリカ生まれ #はしご形フレームを持つ #荷台にシェルと呼ばれるFRP製のハードトップを載せた、ピックアップトラックのスタイルを模したクルマ となる。 ウィリス・ジープ・ステーションワゴン(英語版)やカイザー・ジープ・ワゴニア(英語版)が誕生した時代には、まだSUVの概念は定着しておらず、後年、さかのぼってSUVとしてカテゴライズされている。これらは当初から乗用車として開発され、特にワゴニアは、4枚のドアを持ち、高級ステーションワゴンにも劣らない装備と仕上がりを誇っており、後に登場するビッグスリーのSUVとは一線を画していた。 ピックアップが好まれる北米市場では、この手のクルマには、元となったピックアップに近いスタイルを与えることが販売上有利であり、不可欠となる。フォード・ブロンコは、オフロード走行に適したコイルリジッドのフロントサスペンションと専用ボディーを持ち、理想的なクロスカントリーカーとしてデビューした。しかし、販売は芳しくなく、2代目へのモデルチェンジの際、同社のピックアップであるF-150と同様の車体とサスペンションとなった。高い志と先進性を失ったにもかかわらず、販売面では一転して大ヒットとなった、という例もある。 日本車では、古くから北米市場へピックアップトラックを輸出していた二大メーカーの、N60系ハイラックスサーフとD21型系テラノが本来のSUVの解釈どおりで、2ドアであること、ピックアップ同様のフロントマスクで室内高が低いこと、取ってつけたような荷室の屋根(ハイラックスのFRP製シェル)や窓(テラノの三角形の窓)を持つこと、跳ねるような硬いスプリングを持つことが特徴である。この2車が日本国内で販売された際には、国内の事情に合わせ、スプリングは柔らかく変更され、ディーゼルエンジンがメインとなっている。さらにハイラックス・サーフにいたっては、維持費の低い小型貨物(4ナンバー登録の商用車)中心のラインナップとし、決して利便性に優れたクルマではなかったにもかかわらず、大きな成功を収めた。 アメリカのビッグスリーは以前は、小型ピックアップトラックを国内生産しておらず、日本車とバッティングすることもなかったため、このクラスの輸入関税は低く設定されており、日本製乗用車の輸入台数を制限する代わりの、一種の優遇措置でもあった。後にこれらのピックアップトラックをベースとした2ドアまでのハードトップ(ボンネットワゴン)にも優遇措置が認められたことにより、それまでSUVを手がけたことのない日本のメーカーが参入することとなり、低価格とスポーティーな雰囲気が受け、一大市場へと発展した。 その後ビッグスリーが小型ピックアップと小型SUVの生産に本腰を入れるようになり、2ドア優遇措置が廃止されると、トヨタと日産はこぞって4ドアモデルをメインとしたラインナップへ変更した。この機を逃さず日本のほとんどの自動車メーカーがこのジャンルに参入し、競争が激化することで商品力は急速に高まっていった。ホンダとスバルはフレーム式のシャシやFRのコンポーネントを持っていなかったことから、自力での開発を諦め、両社ともいすゞと提携することになった。 レクサス・LXやランドローバー・レンジローバー、メルセデス・ベンツ・Gクラス (ゲレンデバーゲン)などの高級マーケットでの成功により、それまで「無風地帯」だったビッグスリーのフルサイズSUVにもキャデラック、リンカーンなどの高級ディビジョンが参入し、もとよりエントリークラスの位置づけであったサターンまでもがSUVを発表するに至り、もはや全米でのブームは決定的となった。 車種の分類基準の不明確さと共に、日本においてSUVを定義することの妨げとなっているのは、国内では、それまで「四駆」と呼ばれていたものが、マーケティングの都合で「4WD」、「オフロード車」、「クロカン車」、「RV」、「SUV」と短期間に呼び名を変えられて来たことが原因となっている。 本来軍用車を発端とするクロスカントリービークル(ジープなど)が乗用車化・高級化し、ピックアップ発祥のSUVが、荷台シェルのボディ一体化(メタルトップ化)や4ドア化したことによって、時代とともに互いに歩み寄り、1990年代からは同じSUVの範疇と考えられるようになった。しかしSUVを「スペース・ユーティリティー・ビークル」の略と曲解し、ミニバンも含めて用いる例がある〔三菱自動車がこれにあたる。〕が、これは上記出自からも誤りである。 SUVとオフロード車、または4WDも必ずしもイコールではなく、米国では、販売台数の増加に伴い、2WDモデルの比率が高まっている。山間部や降雪地の多い日本では、もしものときの「保険」的な考えで4WDが好まれる傾向があった。 かつて四輪駆動、4WDと呼ばれたものが非舗装路(オフロード・グラベル)の走破性に重きを置いていたのに対し、SUVはこれに加えて舗装路(オンロード、ターマック)での運動性能も重視して開発されている。しかし、明らかにオフロード重視でありながら、販売上の都合でSUVとされている車種も少なからず存在し、これも混乱の原因となっている。 また最近の乗用車ベースで、SUV風のスタイリングと快適性を訴求したクロスオーバーSUVの登場により、SUVの定義も「ピックアップあがり」から、高級乗用車へのシフトが見られる。1990年代後半のトヨタ・ハリアー(レクサス・RX)の成功以来、BMW、ボルボ、アウディ、そしてポルシェなど、背の高いクルマとは無縁であった高級車メーカーや高級車ブランドが次々にクロスオーバーSUVを製造するようになった。 また、さほど背が高くなく、見た目もステーションワゴンやハッチバックと大きく違わないため、通常クロスオーバーSUVとは呼ばれず、単にクロスオーバーと呼ばれる車もある。これらは主に米国において高い悪路走破性が認められて成功したスバル・レガシィアウトバックと、それに追従したボルボ、アウディなどといった欧州メーカーの、グランツーリスモ的なラグジュアリーワゴンの相次ぐ登場と隆盛がその礎となっている。 クロスオーバーSUVが、SUV譲りのシーンを選ばない走行性能と、高いデザイン性を両立しようとする試みの中から生まれた点が否めない一方、一部に、悪路走破の能力もなく、全高も最低地上高もさほど高くないが、SUV風のボディデザインを纏い、クロスオーバーを名乗るファッション性のみを追求するようなものも生まれている。また、アメリカでは2000年代後半以降、形状はミニバンとさほど変わらないが、販売戦略上有利とみなされてクロスオーバーを名乗るような車や、ミニバンの後継車のデザインをクロスオーバーSUVスタイルにした車も増えており、これもマーケットの拡大に便乗したものと見られる。 フルサイズSUV File:Willys2.jpg|ウィリス・ジープ・ステーションワゴン (1946 - 1965) File:Jeep Grand Wagoneer.jpg|ジープ・ワゴニア / ジープ・グランドワゴニア (1963 - 1991) File:Jeep Cherokee SJ Chief S f.jpg|ジープ・チェロキー (SJ) 1974 - 1983 File:69Blazer.JPG|シボレー・ブレイザー (1969 - 1994) File:1978 ford bronco blue white top.JPG|フォード・ブロンコ (1966 - 1996) File:Dodge-Ramcharger.JPG|ダッジ・ラムチャージャー (1974 - 1993) スモールサイズSUV File:84-96 Jeep Cherokee 2door.jpg|ジープ・チェロキー (XJ) (1984 - 2001年) File:1st-Chevrolet-S10-Blazer-2door.jpg|シボレー・S10ブレイザー File:89-90 Ford Bronco II.jpg|フォード・ブロンコII 抄文引用元・出典: フリー百科事典『 ウィキペディア(Wikipedia)』 ■ウィキペディアで「スポーツ・ユーティリティ・ビークル」の詳細全文を読む スポンサード リンク
|